空庵事務所での最年少のお客様は、16歳の高校生だったが、
その記録を更新して、12歳のお客様がいらっしゃった。お母様
は2度目だが、今回はお子さんの事を中心に聞きたいとの事で、
連れて来られたのだ。
ドアを開けたものの、お子さんは入る事を頑なに拒んでいたので、
私は「ムリしなくていいからね。どっかで遊んでてもいいよ」と声を
かけた。だが、大好きなお母さんとは片時も離れたくないようだ。
渋々、事務所内に入ると、私の椅子を見て「社長の椅子みたい」
と笑ってくれた。ジュースでも出してあげれば良かったのだが、
ついいつも通り、熱い日本茶にしてしまった。
ごめんねと謝ったが、いいよ、大丈夫と日本茶をすすってくれた。
こんな事ならお菓子でも用意しておけば良かったなぁ。気が利か
なくてごめんね(>_<)
カウンセリングが始まると、飽きてきたのかダダをこね始め、その
うち疲れて、ママの膝の上で眠ってしまった。お母様は平謝り
だったが、子供にとっては一刻も早く家に帰りたかったのに、
無理やり訳のわからない所に連れて来られたのだから、たま
ったものではない。刃向うのも仕方がないだろう。
親に刃向えるのは、「自分は愛されてるんだ!」という絶対的な
安心感があるからだ。どんなに親に逆らっても、自分は見捨てら
れないんだ!という安心感が根底にあるからこそ、これでもかっ、
と安心して逆らえる。
ワガママ言おうが、ケンカしようが、生意気な事を言おうが、自己
主張が激しかろうが、親は絶対に自分を見捨てないという安心感。
これは子供にとって、かけがえのない財産だと思う。
一旦、親から見捨てられるという恐怖に憑りつかれたら、期待通り
の良い子供を演じ続け、何とか見捨てられないように、親に逆らう
事もケンカする事も、生意気な口を聞く事もなく、自己主張もせず
に大人になっていく。
そして、抱えたまんまの不安は、自己否定という形で継続されて
いくか、不満は不発弾となって、どこかで爆発するか。いずれに
せよ、演じ続けなければならない人生は、辛く苦しいと思う。
親子ゲンカはきっと、信頼関係からしか生まれないんだろうなぁ。
決して良い子ではなかった自分の人生を振り返って、つくづく
そう思う。反抗しまくっていた私は、とっても幸せだったのだ。
このお子さんは、かなりの実力の持ち主で、未来に向けての
大きな夢があり、これをお母様と一緒に応援したいと思った。
だって、すっごーく顔晴ってるもんね。最後にお土産を渡したら、
学校生活の事などをうれしそうに話してくれた。今日はママと
一緒に来てくれてありがとね。会えてとってもうれしかったよ。