「線路内に人が立ち入ったという情報が入りましたため、只今、運転
を見合わせております。安全確認ができ次第の発車となります。お急
ぎのところ大変申し訳ございません。しばらくそのままでお待ち下さい」
といううアナウンスが山手線内に流れる度、乗客のため息が聞こえる。
どーして線路内に入るワケ? 20分が経過し、だんだん殺気立って
きた頃、振り替え輸送の案内があった。
車内ではその場に留まる派と動く派に分かれる。私はとりあえず留ま
る派を選んだ。こんなアクシデントの末、中野に着くと、今度は駅前
が埋め尽くされるほどの黒山の人だかりだった。
そっか、明日は参院選の投票日か。私はいつも期日前投票なので、
すっかり忘れていた。誰が来るのかと思いきや、安倍総理との事で、
そんなに見たいの?話が聞きたいの? 頼むから道を開けてくれぇ。
ドドドッと疲れて、ようやく中野サンプラザ15Fのリーフルームに到着。
こんな所があったんだね。初めて知ったよ。健康養生塾協会理事長
の友人は、「もうさっきからドキドキして、昨日から眠れなかったの。
ねぇねぇどうしよう?」「大丈夫大丈夫。みんないるんだから」「未空
ちゃん、何かあったらフォローよろしくね」「うん、いつでもどうぞ」
受付に会費を払いに行くと、かつての同僚がいて「未空さん、どうも
お久しぶりです。お元気そうですね」「うわーっ、久しぶり。ここで会え
ると思わなかった。今日はお手伝いなんですか?」「はい、手伝いで。
何とか元気にやってます」
「確か転職して、その後、何やってるんでしたっけ?」「あっ、名刺お
渡ししておきますね」「社長とは辞めて以来、会ってるの?」「いえ、
もう全然。ある時期を境に、ホント変わっちゃいましたからね」
そこからはかつて、一緒に働いていた頃の話にタイムスリップ。「よく
香港から会長や顧問達が来てたよね。その都度、運転手係で大変
だなぁと思ってた」「お土産とかたくさんあるんですよね」「確か友達へ
のプレゼントに、傘はあげちゃいけなくて、あくまで貸すんだったっけ?」
「文化の違いがあるんですよね」「会長達の接待で、高級てんぷら
食べに行った事があって」「そうなんですか?」「1人2万円のコース
だったんだって」「今じゃ考えられないですね」
「新製品のDMを出すんだったかなぁ。アクセスでクエリーかけたものを、
エクセルで表にして。そのリストの半分をチェックしてもらった後、慎重
に繋げたんだよね」「そんな事ありましたね」「2万人くらいだったかな」
「確かそれくらい」「ずいぶん助けてもらって、あの時は本当にありがとう
ございました」「いえいえ、理事長と未空さんの2トップがいた頃が、一番
充実してましたね」「千代田区一番町のオフィスにいた頃でしょ。イスラ
エル大使館の裏側のマンションで、一番環境が良かったもん」
「そうですよね。もうあれから15年ぐらい経ちますよ」「えーーーーーーっ、
15年も?」「はい、それぐらいなはずです。でも、あっという間ですね。
懐かしいなぁ」「あの頃がピークで、今はガタ落ち」 昔話は尽きない・・・