ある秀才の男の子がいた。
彼は成績が良い事ばかりを褒められて育った。
つまり、Havingばかり褒められて育ったのだ。
その結果、彼は「「良い成績を取らなければ、自分には価値がない。
他人から評価されなければ、自分には価値がない」と思うようになった。
彼は大人になった今も、人から評価されなければ安心できない。
そして、出世競争に時間と労力を捧げるようになり、
自分の人生を楽しむ事ができなくなった。
ある女の子は、母親から「積極的であってほしい。社交的であってほしい。
友達をたくさん作ってほしい」と期待されて育った。
しかし、実際は内気な性格で、友達付き合いが苦手だった。
1人か2人の、よほど気の合う子としか遊ばなかったし、
しかも自分から遊びに誘う事はなかった。
何よりも、本を読むのが好きだった。
そんな我が子を見て母親は、「あなたは、どうして積極的でないの?
どうして友達と遊ばないの?」と、いつもため息をついた。
つまり「友達と遊ぼうとしない」という、その子のDoingを嘆いたのだった。
その結果、その子は「そのままの自分ではダメだ」
と思うようになって、自信を失っていった。
ところが、その子が高校生の時、その子の母親の心が変わった。
その子の存在をそのまま受け入れるようになった。
「どんな時のあなたも愛しているよ。
あなたがいてくれる事が、お母さんの幸せなのよ」
というメッセージがその子に伝わり、その子の自尊心は満たされていった。
その子は自分らしさを愛せるようになり、大人になって小説を書くようになり、
今は小説家としての人生も楽しんでいる。
子供の自尊心は、良い成績をとって褒められた時に満たされるのではない。
悪い成績をとっても、抱きしめられた時に満たされる。
「君はそのままで素晴らしい存在なんだ」と、
そのままの自分を受け入れられた時に、自尊心は満たされる。
自分のDoingでもHavingでもなく、
自分のBeingをそのまま無条件に受け入れられた時に、
その子の自尊心は満たされる。
我々の最大の価値は、とった行動や出した結果にあるのではなく、
存在する事にある。
これに本当に気づく時、自尊心は満たされてゆく。