2013 年 6 月 9 日 のアーカイブ

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君も誰かにしてあげなさい

2013 年 6 月 9 日

あれは人里離れた雪深い、オレゴンのキャンプ場での出来事だった。

20年も前の話だというのに、まるで一点の曇りもないオレゴンの空のように、
今でも鮮やかに覚えている。

私は妻と2歳の娘と共に、
エンストを起こしたレンタカーの中で困り果てていた。

病院での実習2年目を終えた事を記念して旅に出たのだが、
私のマスターした医学知識は、
このキャンピングカーには何の役にも立たなかった。

とりあえず電気スイッチをまさぐったが、真っ暗なままだ。

エンジンをかけようとしても、ダメだった。

車から出ると、白く逆巻く早瀬の轟に、
私の罵詈雑言は幸いにもかき消されてしまった。

バッテリー切れが原因だとわかったので、
娘を妻に任せ、数マイル先のハイウェイまで歩いて行く事にした。

2時間後、私はくじいた足を引きずって、ようやくハイウェイに辿り着いた。

トラックを呼び止めて乗せてもらい、
最寄りのガソリンスタンドで下ろしてもらった。

しかし、そのガソリンスタンドに向かって歩いていくうち、
今日が日曜日だという事に気がついて、目の前が暗くなった。

やはり、店は休みだった。

幸い、近くに公衆電話とボロボロの電話帳があったので、
20マイル離れた隣町のオートショップに電話した。

電話に出てくれたボブという男は、「もう心配ないよ」と言った。

「普段は日曜は休むんだが、30分以内にそっちに行くから」

私はホッとしたものの、一体どのくらいの料金を払う事になるのかと、
気が気ではなかった。

ボブが乗って来たピカピカのレッカー車で、2人はキャンプ場に戻った。

先に車から降りた私は、歩き始めたボブの姿を見て茫然とした。

足には金属製のギブスをはめ、松葉杖までついているではないか!

彼がキャンピングカーまで歩いて行くのを見ながら、
私はまた彼への支払いを頭の中で計算し始めた。

「大丈夫。バッテリーが切れただけだよ。
最初はちょっとガタつくけど、後はスイスイ行けるからね」

ボブはそう言って、バッテリーを充電している間、娘に手品を見せてくれた。

娘は、ボブが耳の中から取り出した25セント玉をもらって大喜びだった。

彼が充電に使ったブースターコードを積み込むのを見ながら、
私はいくら支払えばいいのかと聞いた。

「いや、何も要らないよ」

意外な答えだった。

「でも、何か払わなきゃ」

「いらないよ」

彼は繰り返した。

「ベトナム戦争でこの足をなくした時、ある人が俺を生死の境から助けてくれた。

その時かれが、君も誰かにしてやってくれって言ったんだ。

だから、俺に気兼ねはいらない。

その代わり、誰かが困っているのを見かけたら、その人を助けてやってくれ」

さて、話を20年後に早回しして、舞台は忙しい私の医局。

ここで私は、しばしば医学生の訓練を行っている。

シンディは州外の学校の医学生だが、この町に住む母親の所に滞在したいと、
私の元で1ヶ月研修した。

その日はドラッグとアルコールのために、
体がボロボロになった患者を診察したばかりだった。

シンディと私は治療法について、あれこれ検討していたが、
ふいに彼女の目に涙が浮かんできたのに気がついた。

「こういう話し合いは嫌かい?」

と私は尋ねた。

「そうじゃないんです」

と言いつつ、シンディは泣いた。

「実は、私の母もこの患者さんと同じ問題を抱えているんです」

それから私達は会議室の片隅で、
シンディの母の痛ましい過去について話し合った。

涙を浮かべ、シンディは一家を苦しめてきた怒り、恥辱、
敵意の歳月を赤裸々にうち明けた。

私は彼女の母親が治療を受けるよう勧め、彼女を励まし、
母親が経験豊かなカウンセラーと相談できるよう手配した。

家族の他の者達の強い勧めもあって、
シンディの母は治療を受ける事を承知した。

母親は入院し、数週間後には別人のように生まれ変わって退院した。

崩壊寸前だったシンディ一家に、初めて希望の光が射してきた。

「どうやって、このご恩を返したらいいのでしょうか?」

シンディが私に聞いた。

雪のキャンプ場に立ち往生したキャンピングカーと、
善きサマリア人ボブを思い起こせば、答えはたった一つだった。

「君も誰かにしてあげなさい」

/「心のチキンスープ(ダイヤモンド社刊)」より

明大マンドリン倶楽部定演後、ハンバーガーを食べる予定のお店がすでに閉まっていたので、外苑前からプラプラお散歩。夜風が気持ち良く、そのまま表参道ヒルズの「洋食ミヤシタ」でディナーとなった。お初のお店で私は、人気のぐつぐつアツアツ土鍋ハンバーグ&ライスを完食(●^∀^●) 最近、あまり食べたい物がなかったので、久々に満足したなぁ。やっぱ美味しい物を食べると、心身共に元気になれるよね。人間って、超単純(笑)。だから、生きられるo(^-^)o

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