私は下町の台東区谷中に生まれ、小さい頃はお寺が遊び場だったので、
お線香の匂いには親しみを感じ、おやつはお墓のお供え物というバチ
当たりな子供だった(笑)。でも、一度もお腹を壊した事がないというのは、
神仏から護られていたんだと思う。
昨年の夏越の大祓は、空庵事務所のある巣鴨の氏神様である大塚の
「天祖神社」に行ったが、今年はどうしてもMy産土(うぶすな)様が頭
をよぎり、西日暮里の「諏訪神社」に出かけた。
午後5時から始まる神事に向け、氏子の人達が続々と集まって来ていた。
天祖神社では当日でも受け付けてくれたが、諏訪神社では神事に参列
を希望する人は、人の形をした和紙に名前と年齢を書いた「形代(かた
しろ)」を、前日までに届けなければならない。私は間に合わなかった
ので、とりあえず茅の輪をくぐってお参りをした。
茅の輪くぐりの回り方には、決まりがある。神様に向かって、右が上位・
左が下位となり、進む(=神様に近づく)時は、下位の左からとなるので、
まず左回りから、次に右回り→左回りという順序で、ようやく神様に近づ
く事ができる。これが結果的に、8の字を描いている事になるのだ。
ちなみに、神主さんがよく振っている「大幣(おおぬさ)」も、お祓いする際
には、「左・右・左」と振る。神事が始まる前、本殿の階段を降り、すぐ脇
の所でMailしていると、不意に白髪の女性が近づいて来た。
「これから神事を受けられる方ですか?」
「ええ、本当は受けたいんですけど、前日までに形代をお納めしていないので」
「私もそうなんですよ。王子神社でお納めして来たので、
2つの神社ではまずいですよね」
「どうなんでしょう? でも、ご縁があって、ここにいらっしゃったのであれば、
大丈夫だと思うんですが」
「神事が始まったら、本殿前とかで受けられますか?」
「そうですね。中には入れないので、せめて外で受けたいなと思っているのですが」
「それならご一緒だわ」
「茅の輪の前辺りで、お祈りするのであれば、特に問題ないと思うので。
せっかくここまで来た訳ですしね」
そんな会話をしているうちに、午後5時の夕焼けチャイムが鳴り、神事が
始まったので、本殿前に2人で移動した。