アメリカのある病院のある病室の話です。
その病室には、7人の患者が入院しています。
彼らはみな、死の宣告を受けた結核患者達で、自力では歩けない
末期症状の者ばかりでした。
その病室は入口から奥の方まで、7台のベッドが並んでいる非常に細長い
形の病室で、横の壁の一番奥にだけ、小さな窓が1つだけありました。
窓はその1つだけで、一番奥のベッドに寝ている人のみ、
窓の外が見えるのでした。
その一番奥に寝ていたのは、ジミーという男。
ジミーは毎日、窓から見える外の景色を他の6人達に語って聞かせるのでした。
「お~い、みんな~、今日はいい天気だぞ!
公園のチューリップの花も咲き始めたなぁ。蝶々も飛んでるぞ」
「お~い、みんな~、今日は子供達が遠足みたいだぞ。
みんな楽しそうだなぁ。手を繋いでる子もいるぞ。可愛いなぁ」
死を待つばかりの患者達にとって、ジミーの教えてくれる外の様子が
唯一の楽しみだったのです。
そんな中、一人だけ心の荒んでいる男がいました。
病室の入口から、2番目のベッドで寝ているトムという男。
トムはいつもこう考えていました。
「ジミーの奴だけ、外の景色が見れるなんて」
ある朝、みんなが目覚めてみると、窓際のベッドに寝ていたはずの
ジミーがいないんです。
夜中のうちに、ジミーが亡くなっていたのです。
それを知ったトムは、しめたとばかりにほくそ笑んで、
「オレを窓際のベッドに移してくれ!」
と、看護師達に頼んだのです。
やむなく看護師達は、トムを窓際のベッドに移す事にしました。
移してもらう間、トムはこう考えました。
「これで外の景色を独り占めできる。オレはお人好しのジミーみたいに、
みんなに話してなんかやらないぞ」
そして、奥の窓際のベッドに移され、窓の外に目をやった瞬間、
トムは愕然としたのです。
窓の外には、公園も道もなんの景色も見えなかった。
ただ、隣ビルの灰色のコンクリートの壁しか見えなかったのです。
トムは一瞬にして、全てを理解しました。
「そうだったのかぁ。ジミーの奴は、俺達の心を励ますために、
この灰色の壁を見ながら、外の世界を想像して語ってくれてたんだ」
その日から、トムはジミーに負けないくらい想像力を働かせて、
外の景色をみんなに語り続けたのでした。
/野口 嘉則
ポッドキャスト「野口嘉則の“幸せ成功法則”」より抜粋、引用
http://dailysplice.com/18-episodes