「プチ紳士運動」代表の志賀内泰弘氏が、また新刊を出されました。
「毎日が楽しくなる17の物語」というご本です。
次のようないいお話が載っています。
(ご本人の了解を得て、転載します)
*特選メニューより 1品目「スペインのおばあさん」
大手通信企業に勤める友人小栗健吾さんから届いたお話です。
大学2年生の春休み、ふらっとヨーロッパに一人旅をしました。
イギリス、フランスを経て、南へ下りスペインに入った時の話です。
そこは本当に太陽のような国で、周りの人・空気、何もかもが温かく、
人々の好意にただ甘えながら、楽しく旅を続けていました。
1ヶ月が経過し、もう旅も終わりという頃、その出来事は起きました。
アルハンブラ宮殿で有名なグラナダという街に、深夜到着のバスで
降り立った時、それまでの好天気と春の陽気はどこへやら、
4月なのにひどく冷たい嵐のような暴風雨に見舞われました。
帰国も間近との安堵から、ほとんどの荷物は日本へ送ってしまった後で、
傘や防寒具やガイドブックさえも持っていませんでした。
人気もなく、方向もわからず、最初に着いたホテルも入口が
閉まっていて、誰も出て来てくれる気配がありません。
体は冷えてくるし、暗く冷たい夜の恐怖感や自分の甘さに泣けてくるし、
かなりパニック状態になっていました。
時間がどれくらい経過したかも全く覚えていません。
ふと気づくと、目の前にかなり年老いたおばあさんが立っており、
心配そうな目で何かしゃべりかけて来ました。
ところが、何を話しているかサッパリわかりません。
情けない事に、自分はただ泣いているだけ。
すると、そのおばあさんが僕の手を取って歩き出しました。
今となっては、どこをどう歩いたのかも覚えていません。
連れて行かれたのは、ひどく狭い古びた民家で、
小さな部屋に家族6人で暮らしていました。
当時のスペインの失業率は、25~30%近かったと思いますし、
相当に貧しいご家族ではなかったかと思います。
警戒心の強い自分ですが、疲れと共に、
何だかそこに流れている空気に安堵して、泥のように眠りました。
翌朝、目を覚ますと、家族が皆、心配そうに覗きこんでいました。
照れて笑うと、子供達が恥ずかしそうに笑い返してきました。
皆のとても澄んだ瞳が印象的でした。
すぐにおばあさんがスープとパンを持って来てくれて、
皆で分け合って食べ出しました。
夢中で食べた後で、おばあさんが食べていない事に気づきました。
自分が詫びると、くしゃくしゃの顔を更にくしゃっとしながら、
何か話しました。
「いいんですよ」と言ってくれている気がしました。
ひょっとして自分は、 今日食べる物にも困っている家族から
大切な食事を奪ったのではないか。そう思うとどんどん恥ずかしくなり、
居たたまれなくなってきました。
そして、「もう出発しなければ」と言って、
逃げるようにその場を離れようとしました。
靴を履き、振り返っておばあさんの瞳を見た瞬間、
自分でもビックリするような大声で、
「ムーチャス・グラシアス!」と叫んで、家を飛び出していました。
落ち着いたら、また涙が出てきました。
名前も住所も聞いておらず、お礼のしようもありません。
20歳にもなって、まともな行動ではないでしょう。
その時は胸がいっぱいで、
歩きながら心の中で、何度も何度も感謝を繰り返しました。
考えてみれば、薄汚れた格好をしたヒゲだらけの謎の東洋人に対して、
精一杯のものを与えてくれたのだと思います。
助けてもらわなかったら、どうなっていたのか。
情けない話ながら、心の底から誰かに感謝した、
初めての経験だったと思います。
日本に帰ってから、棘々しく人を寄せつけないオーラを常に出していた自分が、
皆に「変わったね」と言われ出しました。
「スペインのおばあさん」に学ぶ気づきのキーワード
「恩送り(ペイ・フォワード:PAY it FORWARD)していくということ」
若い女性Aさんから、「プチ紳士・プチ淑女を探せ!」運動の事務局に
届いたお話です。
仕事帰りに、夕立ちに遭ってしまった時の事だそうです。
あいにく傘を持っていなかったので、シャッターの閉まったお店の軒下で、
雨宿りをしていました。
しかし、なかなか止みそうにありません。
そこへ傘を差したおじさんが現れました。
片手に持ったもう一本の傘を差し出しながら、こう言いました。
「この傘あげるわ。骨一本折れてるし」
更に「どうせ捨てようと思っていた傘だ。
少しの間でも君の役に立つなら、この傘も喜ぶよ。
返すなんて面倒な事はしなくていいから」
そう言うと、おじさんは少し照れくさそうに去って行きました。
そのおじさんの好意を素直に、受け止める事にしました。
翌日、骨の折れた 傘を200円で修理して来ました。
おじさんの優しさがこもった傘は、
いつか私と同じように、雨に濡れて困っている人に差し上げる事にしました。
人からもらった恩を、
その人に返さずに順繰りに回していく事を「恩送り(ペイ・フォワード:
PAY it FORWARD)」と呼ぶそうです。
この傘が人から人へと送られて、日本全国を旅して、
人の温もりを繋げていったらいいなぁと思っています。
さて、スペインのおばあさんの話です。
おばあさんは、間違いなく、何かのお礼を求めて、一晩の宿と朝食を
ごちそうしてくれた訳ではありません。
見返りを求めない行為。それは奉仕の心です。
先の友人は、このおばあさんにお返しがしたくても、
今ではその場所さえわかりません。
でも、他の人に恩を送る事はできます。
彼は、イベントがあると司会や裏方の仕事をして手伝ってくれます。
まさしく、ボランティア精神の豊かな人です。
人からの好意は素直に受ける。
そして、それを恩送りしていく事で、
誰もが住みやすい社会になる事でしょう。
この「スペインのおばあさんの話」を読むと、
スペインから来日して、関西に40年以上住んでいた友人達が
言っていた事を思い出します。
日本人は礼儀正しく、とても繊細で愛情深く、
「人に迷惑をかけない」
という規範に従っているのはいいが、
残念な事に、その愛情を積極的に表わそうとする人が多くはない。
でも、自分達は子供の頃から、
「隣人を自分と同じように愛する」
という聖書の言葉を教えられてきたためか、
ちょっとお節介かなと思っても、ついつい行動してしまうんだ。
そのため、かえって迷惑になる事もあるけれど・・・
そんな事を言っていました。
迷惑どころか、
小栗さんがスペインのおばあさんから大きな恩を受けたように、
私もスペインの人達から、多くの恩を受けてきました。
そして、皆さんもそうであるように、
もちろん私も、これまで周りの日本人達から、
たとえ積極的でなかったとしても、
数え切れないほどの恩を受けてきました。
人は受けたものを与えるようになります。
私が本やメルマガや講演で発する言葉は、
これまでたくさんの方から、様々な機会に受けてきたものです。
それをあなたに、そして他の人にも、届けているのです。
もし、私の「心の糧」となってきた言葉が、
あなたの心に残り、あなたに役立つものになるのなら、
このメルマガもまた「恩送り」になっているかもしれません。
★今日の話から学べる幸運のヒント★
「恩送り(ペイ・フォワード:PAY it FORWARD)」をする。
いい社会になりますように・・・(^.^)
【出典】「毎日が楽しくなる17の物語(志賀内 泰弘著)」
http://tinyurl.com/c245fv
★「プチ紳士を探せ!」運動では、世の中を思いやりいっぱいに
するために、こんないい話を集めて配信しています。
いい話はこちらでもご覧になれます。 http://www.giveandgive.com/
/中井 俊己(作家、教育コンサルタント)
メールマガジン「心の糧・きっとよくなる!いい言葉」より抜粋、引用
この花はヒメツバキだったかな。私の氏神様の境内に咲いていたんだけど、あまりに整いすぎて、完璧なルックスに感動した。蕾の状態でも、それはそれは精巧にできている。生きとし生ける全てのものは、本当に奇跡だと思う。こういった写真もペイ・フォワードになったらいいなぁ♪