私がマザー・テレサと同じく、敬愛してやまない大石
順教(じゅんきょう)尼は、明治21年、大阪の道頓堀
に生まれ、本名を「大石よね」という。
15歳の時、大阪堀江で芸妓の道へ進み、山梅楼の
中川万次郎という人の養女に入る。芸名は「妻吉」
となったが、明治38年(1905年)6月21日、悲劇
が彼女を襲った。
舞踊の修業を指導していた養父・万次郎は、妻が男と
駆け落ちした事から、酒に溺れて狂乱し、日本刀で
逃げた妻の母親、弟、妹の他、養女にしていた2人
の芸妓も巻き添えに、一家5人を惨殺。
この時、17歳の妻吉も巻き添えを受け、両腕を切り
落とされたが、奇跡的に生還する。この惨劇は「堀江
6人斬り事件」として日本中を震撼させ、この日を
境に、ただ一人、一命を取り留めた妻吉の人生は、
一変する事となる。
その後、よねは絶望と周囲の好奇の目に耐えつつ、
話題の事件の被害者として、身障者である自身の
姿を見世物としながら、寄席や地方巡業で生計を
立て、両親を養う日々を送る。
そんな巡業中の19歳のある日、よねはハッとする光景
を目にする。その光景の中にいた、あるものとは?!