金沢にいる友人から、一通のメールが届きました。
そこには、こんなステキな詩が綴られていました。
情感豊かで、風景が目に浮かぶような詩です。
「十三夜」
十三夜の海に舟を出す
手漕ぎボートがゆらゆら
海は黙って鏡の波
櫂は重く軽く銀の滴
航跡は踊る星屑
舳先は月を追って追いつけない
水面の月には正体が無いのだ
すくってみても指の隙間を滴る海水
何度やっても掴めない
それは私の夢
正体の無いまま
やたらと憧憬をそそる
櫂は低く悲鳴を漏らす
前進のための伴う痛み
生きて行くための軋み
生きて行くための歪み
傷を拾い集めて人は歩む
不規則な足跡はひび割れて
寂寞は重く冷たく
何故に道程は痛い
仰ぎ見れば十三夜の月
満月に満たない十三夜の月
「どんな人が詠んだのだろう」
と興味が湧きました。友人に尋ねると、
再びメールが届きました。
絶句。
以下は、その友人からのメッセージです。
* * * * * *
いい詩でしょう。
波に揺られる風情が言葉の間から感じられて、
結構、気にいっています。
作者は39歳の四方健二という金沢在住の詩人です。
彼は昨年、泉鏡花記念金沢市民文学賞を受賞しています。
詩の響きから、あちこちを漂泊し、
気ままに吟行するような印象を受けるのですが、
実は彼は30年以上、
家からほとんど外に出たことがありません。
その家ですが、普通の民家ではなく、
金沢市の郊外にある病院が現住所になっています。
彼は7歳で進行性筋ジストロフィー症を発症して以来、
病床での生活を送っているのです。
当然、彼の生活・行動範囲は限られてきました。
でも、彼の魂はどこにでも飛んでいき、
生命や自然のすばらしさを限られた命の時間を使って、
詩として紡ぎ出しています。
現在、彼の創作場所はベッドの上です。
彼に残された身体的機能はかなり制限されています。
手が動かない代わりに額にセンサーをつけて、
目と額の動きでパソコンを操って、
創作活動を続けています。
その四方君が、今月30日に金沢市内で詩の朗読会を開きます。
本人も移動ベッドで出席する予定です。
朗読会(朗読交流会「一期一会」)は、
9月30日午後1時半から、
金沢市の市民芸術村パフォーミングスクエアにて。
お近くの方はぜひ。
* * * * * *
慌てて友人に電話をしました。
聞けば、資金の点で、少し苦労しているとのこと。
私も、微力ながらカンパさせていただきました。
もし、もしも琴線に触れて、
「私も」とおっしゃっていただける方がありましたら、
下記までカンパのご協力をお願いいたします。
カンパは1口5,000円で、振込先は、
彼の郵便局総合通帳(記号番号13180-3480711)か、
現金書留で、〒923-0841 石川県小松市本江町ヲ123-1
開地板金塗装内、朗読交流会「一期一会」実行委員会
までお願いできれば幸いです。
その他、詳しいことをお知りになりたい方は、
金沢の安江さんまでメールで。
また、ご友人にも、このメルマガを転送して、
ご協力いただけましたら幸いです。
遠くに住んでいても、応援のムーブメントに
力を貸すことができたらと願うものです。
最後にもう一つ作品を紹介させていただきます。
「砂時計」
無機質過ぎる音軽く
砂は落ちる
冷酷なまでに規則正しく
サラサラと限られた時を
無情な流れは何思う事無く
ただ淡々と淡々と
時は止められない
時は流れ行くだけ
左手に響く鼓動は
私の中の砂時計
限りある命を刻む
命の砂時計は止まらない
この命尽きるまで
ならば私の砂時計
落ち行く砂を輝かせ
七色の虹を放とう
ならば私の砂時計
落ち行く砂を集めて
太陽の微笑を幾重にも
ならば私の砂時計
落ち行く砂に音感乗せて
私の歌を唄うのだ
砂は落ちる
私の中の砂時計
/中井 俊已(作家、教育コンサルタント)
メルマガ「心の糧・きっとよくなる!いい言葉」より引用