Y先生は何を聞いても、「そのうち体が教えてくれますから、焦らないでぼちぼち
いきましょう」としか答えてくれなかった。塩田氏の師匠である合気道の開祖・
植芝盛平氏も、どんな格好でやっていても「あぁ結構や、結構や」と言うだけだ
ったらしい。不親切といえば不親切だが、植芝先生は武道とはそういうものだ
と考えていたらしい。太極拳も元は武道であり、Y先生も同じ考え方だ。
太極拳というとジジババのイメージが強いが、昼間のクラスと違い、夜のクラス
の生徒はほとんどが社会の現役組。毎週水曜日のPM6:30に全員が揃う事は
有り得ない。そのため遅刻・早退は自由。初日から「教室の前で急に止めたく
なったら、そのまま帰って下さって結構です。とにかくムリをしないで下さい」
と言われた。このシステムはS先生になってからも引き継がれている。
今でも忘れられない思い出がある。ある時、私が何か質問した後だったか、くわ
しいシチュエーションは覚えていないが、Y先生がそばまでやって来て、「最後
はココにくるからね」と指さした事があった。はぁぁぁぁぁ~?
太極拳は24式あるが、こんなワケのわからん型をやって、どーして最後にアタマ
にくるのか、私にはサッパリ理解できなかった。そんなY先生から毎週「ムリをし
ない、がんばらない、人と比べない」とインストールされるうち、ある時、ふと気づ
いた。これって太極拳の事だけじゃないじゃん。全部そーなんじゃん!
「太極は陰陽の母。極(きわまり)を作らない」「前後左右斜め自由に動けるの
が円運動」etc. それからというもの太極拳が仕事や私生活、その他様々な
事にフィードバックし始めた。その逆も然り。
Y先生は太極拳の事だけじゃないんだよ、全てに繋がっているんだよ。だから、
最後はマインドにくるよと言いたかったのだ。体が固いだの、どれくらい足が
上がるだの、型が身についてないだの、そんな事はどーでもよろしい。アタマ
の悪い私にもようやくわかった。とびっきりうれしい瞬間だった(号泣)
♪デザイナーの友人の作る香炉はとても繊細だ。よくもまぁこんな細かい芸当をやれるもんだ、と超ブッキーな私はいつも関心している。尊敬の眼差し・・・