シンガポール&スリ・ランカから無事に帰って来て、おいしい鉄火丼を堪能し、
カラダはすっかり日本になじんだが、ココロは未だスリランカにあるような気
がしてならない。こういう感じは通常、旅の思い出に浸るといった表現で括ら
れてしまうのだが、もっとココロの奥深い部分で、お釈迦様がドーンと入り込
んでいるような・・・ 例えるなら、自分が母カンガルーで、その袋の中にお
釈迦様がいるような、といっては失礼だろうか(笑)。でも、何とも言えない
不思議な感覚に囚われている。
思えばスリランカ一の聖地「仏歯寺」では、VIPしか許されない場所まで入って、
仏歯塔の前で祈りを捧げる事ができた。これは感激だった。コロンボでは夕方、
土産物屋で、「もうヒンドゥー寺院は閉まっていますので、外から見るだけに
しましょう」と言われ、超ショックだった私は、「土産物はどーでもいいので
(←と言いつつ、大量に買い込んでいた(笑))、一刻も早くここを出て、ヒン
ドゥー寺院に行きたい」とレジの前でダダをこねた。
クレジットカードで支払いを済ますも、日本円でいくらなのか不安になり、ガイ
ドさんにさりげなく聞くと、後ろから素早くチェックが入った。「君ってヒトは、
未だにわかってなかったの?」と呆れられるも、「そんなコトはどーでもイイで
すから、ヒンドゥー寺院に行きたいんですぅ」と切り返した(笑)。
すると、「君はヒンドゥー寺院と仏教寺院のどちらに行きたいの?」と聞かれた
ので、「大元は一つなんだから、全て見たいですっ!」と身を乗り出した。この
ままでは絶対にあきらめきれない。せっかくスリ・ランカまで来たのに。どうし
ても行きたい。お願いです、どうか中に入れて下さい。私を導いてほしい、と
ずっとバスの中で祈っていた。
辺りはすっかり暗くなり、やはり門は閉まっていたが、なぜか私はここで終わる
とは、とても思えなかった。目の前には、見上げるほどに素晴らしい彫刻がほど
こされ、美しい門がそびえている。ガイドさんが「記念写真だけ撮りましょう」と
一同バスを降りて、しばらくすると奇跡が起きた。時間外、まして外国人に対し
て開くはずのないヒンドゥー寺院の門が開き、中に立ち入る事を許されたのだ。
そうだったんだ・・・やはり呼んでくれたんだ。良かった。本当に良かった。
「君ってヒトは・・・」という顔をした人と目と目が合ったので、私はさりげ
なく親指を立てニッコリ微笑んだ。すると、そのお返しなのか、最後に額
に粉を塗ってくれた。私はこういう体験がしたかったんだと思う。
後に、なぜこのヒンドゥー寺院に招かれたのかがわかった。私は間違いなく呼ばれ、
祝福を受けたのだと信じている。としか思えない。その後、ガイドさんが一番好き
だという仏教寺院「ASHOKA RAMAYA」に行く。大仏や弥勒菩薩を始め、数々の
彫刻はあまりにリアルで、そのまばゆいばかりの美しさは、言葉ではとても言い
尽せない。ただひたすら感謝した。
こういう経験の一つ一つが、私とスリランカの絆を深め、まるで体内に巨大なサナ
ダムシを飼っているが如く、お釈迦様が体内をうごめいているような感覚に陥って
いるのだろう(笑)。不謹慎極まりない表現で大変恐縮だが、ココロから感謝して
いる気持ちに嘘、偽りはない。
今、私の右手首には、仏歯寺で結んで頂いた白い紐糸がブレスレット代わりに
なっている。このまま切れるまで、“絆”を大切にしていよう。