「アダルトチルドレンの原点」
人の話を聴くというのは、実は大変難しい事です。特に自分が困っている時は、早くその苦境から
逃れたい気持ちが先走って、ついつい目先の解決策に手を出してしまいます。目の前にある困っ
た現実の根本、根っこを見る余裕がないのです。そうすると人は、自分の聞きたい事だけ聞こうと
します。自分にとって都合の良い解釈に飛びついたり、自分が簡単にできそうな事柄だけに、耳を
傾けます。人の話を聴くというのは、今まで自分が経験したこともないようなお話を聴く事なのです。
ですから、全てが驚きと好奇の連続のはずなのですが、同時に不安や心配が募り、心は葛藤状態
になります。この葛藤状態に耐え切れずに無意識のうちに、自分のテリトリーの中に、人の話を無
理やり押し込もうとします。この時、論理の飛躍や投影や抵抗や転移や合理化が起こります。そう
して、安心と引き換えに「傾聴する事」を手放します。たくさんのヒントが詰まったお話を聞き流す
羽目になります。お子さんの事で、相談にお見えになる親御さんに、私が時々言う事です。「お子
さんを何とかしたいとお考えなら、親もリスクを背負わなければなりません。なぜなら、親が背負
うべき荷物を、今までお子さんが背負ってきたからです」というような事を話しますが、大抵わか
ってもらえません(というか、聞き流してしまわれますね)。そして、まずお願いするのは、次回か
らご夫婦で相談に来て頂けますか、という事です。最初から、ご夫婦で相談に来られた方は、当
センターでは皆無です。次回から夫婦で来て下さいというリクエストに、応じて下さる方も極めて
少数です。「うちの主人は、子供とは口も聞かないから、ここに連れて来ても仕方がない」「主人
の言う通りにしていたら、いつまでたっても子供は良くならない」等々。親が背負うべきリスクは、
まずここにある訳です。夫婦が互いに、相手をどれだけ認め合えるのか。仲良くしろなどとは言い
ません。どことどこが好きで、どこからどこまでが気に入らないのか。お互いが相手の事をよく見
ないとわからないですね。相手の事をよく見るという事は、実は心に葛藤が起こりやすいのです。
特に身近な人とは、無意識から軋轢を起こしたくないという気持ちが沸き起こり、知らず知らずの
うちに目をつぶってしまうのです。そして、自分の勝手な物差しで相手を測ろうとします。夫婦が
お互いを理解しようとするリスクを背負い始めた時、その時初めて、子供は解放されるのです。
報われると言ってもいいかもしれません。子供達は、自分達が頑張ってきた事が、無駄ではなか
ったと思うのです。報われないでそのまま成人し、人の親になる事もしばしばあるでしょう。彼らは
達成感のないまま、人生を頑張って生きていくのです。それは、あたかも自転車のペダルを力い
っぱい踏みしめながら、両手でブレーキを力いっぱい握りしめている図に似ています。いつも追
い立てられて、達成感のないまま生きているのです。そして、やがて我が子が生まれた時に、どの
ように接していいのかわからなくなり、結局自分がされたように、我が子にするのです。
/芳野 正彦(特定非営利活動法人・実践心理教育センター理事長)
今日のトナカイ♪Jump いよいよ明日が本番ゆえ、いつもより長く跳ねております。でも、ギャラは同じ~ by 染之助染太郎(笑)