「すでに自分の時代は終わってしまったのか?」「まだ、自分にやり直す時間は残っているのだろうか?」
65才の老人は、建設中のハイウェイを見てつぶやいた。何度もピンチに見舞われながら、その度に乗り
越えてきた老人も、今度ばかりは「引退」という言葉が頭をよぎった。そして、後に「新しいハイウェイが建設
されるニュースを聞いた時は、それが死刑宣告のように聞こえたよ」と記しています。65才といったら、余生
をのんびりと過ごしたいと思う時期ではないでしょうか? 特に彼は、65年の人生を人の数倍早く、激しく走り
続けてきた人です。がんばってきた自分へのご褒美として、そう考えても良いところでしょう。ところが、運命
は彼に、もっと偉大な計画を用意していたようです。それまでの何回ものチャレンジは、この最終章のため
に準備されていたのかもしれませんね。その最後の、そして最大のチャレンジについてお話しましょう!
その人は、白いスーツに蝶ネクタイ、片手にステッキ、白ひげの「カーネルおじさん」こと「ケンタッキー・
フライドチキン(KFC)」の創業者、カーネル・ハーランド・サンダース(1890~1980)です。
彼は家が貧しく、小学校しか出ていません。10才の時から、転職を繰り返すこと15回ほど。やっと立地の
良いレストランを持ち、安定した生活を送っていました。そこに、降って湧いたのがハイウェイ建設の話です。
道に面したレストランです。味とサービスには定評がありました。しかし、車がその上を素通りしては、お客
さんが半分、数分の一になってしまいます。「ズルズルとレストランを続けたとしても、借金が増えるだけだ。
ハイウェイができる前に、レストランを売ってしまおう」と決心。25年かけて、一から創り上げたサンダース・
カフェを手放しました。しかし、借金を返済するのがやっと。ほとんど手元にお金は残らなかったのです。
そして、頼りの年金はナントたったの105ドル/月額にしか過ぎなかった。その老人に残された選択の道は、
一つしかありませんでした。前に進むしか。挫折から立ち上がる事を、人生で繰り返してきたカーネルの
心には、「どんな状況に置かれようと、自分からあきらめる事はしない」という不屈の魂が宿っていたのは、
大きな救いでした。「フライドチキンだ!」カーネルに残された唯一の財産が、サンダース・カフェで一番
人気だったフライドチキンの調理法である事に気づきました。ただ、もう彼にはレストランがありません
でした。「自分のレストランを持たずに、フライドチキンでビジネスをするには、どうしたらいいか?」
その答えが、「この調理法を他のレストランに売る」という事でした。当時は、フランチャイズという考え
もなければ、ファースト・フードもあまり知られていない時代でした。そこからフライド・チキンをワゴン車
に積みこんで、試食してもらう旅に出たのです。費用節約のため、寝泊まりも車の中。口にするものは、
見本で作ったフライドチキンだけだった。少ない資金もいつ底をつく事か? 肉体的にも精神的にも、65才
の老人には強行軍でした。しかも、努力もむなしく、契約どころか話も聞いてもらえない。壁にぶつかり
ながらも、色々な工夫をしていくのです。例えば、見込みがありそうなレストランがあると、忙しい時間を
避けて、レストラン従業員の食事のために、フライドチキンを作らせてもらいました。そこで気に入って
もらうと2、3日滞在して、お客様に食べてみてもらう事を繰り返したのです。更に、カーネルが料理を
している間に、妻のクラウディアはそのレストランで、ウェイトレスとしてサービスする事までしたのです。
妻が、レストランで着るためのドレスが135ドルもした事を、いつまでもカーネルは覚えていたそうです。
当時としては、思い切った投資だったのでしょう。また、カーネルも料理が終わると、お客さんの所に挨拶
に回って、感想を聞いていきました。そんな努力が効を奏し、フランチャイズが次第に増えていきました。
しかし、断られた数は、その数倍に及んでいたのは言うまでもありません。フランチャイズの仕事を始めて
から、営業のために走破した距離は、ナント40万キロ。世界を10周する距離でした。やがて、テレビ出演等
にも恵まれ、11種類の独自のスパイスで評判の良かったKFCは、どんどん有名になっていきます。それが、
ファランチャイジー探しの旅に出てから、46年後。2002年8月現在、80ヶ国で11000店舗までになっています。
それは、「死刑」同然の宣告を受けた65才の一人の男が、追い詰められたところから始まった話。アメリカ
人でなくても心動かされ、勇気が湧いてきますよね。「自分の信念に基づいて、何か良いものを作り、それ
を広める事により、より多くの人が喜んでくれる」「ケンタッキー・フライドチキンが、レストランにとっても、
食べる人にとっても喜ばれるものだ」という信念だけで始まり、続けられたのです・・・
人生、始めるのに遅すぎる事はありません!
♪今日のお夕飯作り♪ お野菜タップリ冷しゃぶしゃぶ&ホタテ汁の煮物&湯豆腐&豚汁←やっぱ、体が元気になってくるね