徹底して考えぬいた末に生まれる「独創性」と、最後までやりぬく「粘り」
を持つ事。この両輪なくして、大きな夢を実現させる事はできない。
苦労して、これなら大丈夫だと考えてやった実験が、何の役にも立たな
かった時には、本当に心底ガッカリする。自分の人生は、こんなムダな事
の繰り返しで終わってしまうのかと、先行きに絶望してしまう。
けれども、ここで撤退していては、文字通り何もできずに、人生を終わって
しまうのだ。撤退を100回繰り返しても、何も手に入らない。ただひたすら、
撤退する事を学ぶにすぎない。そして、何かある度ごとに、すぐに匙を
投げるようになる。これはちょっと難しいから止めておこう、どうせムダな
時間を費やすだけだ・・・と自分の都合の良い理由を探すようになる撤退屋
の言う事は、大体決まっている。「私は、何度もこの実験をやったけれども、
いつもうまくいかない。だから、私の忠告を聞いて止めた方がいい」。
まるで、あらゆる実験を経験したベテランが、親切に道を教えてくれている
ような態度なのである。しかし、ここで素直に撤退屋の忠告を聞いて、実験を
止めてしまえば、新しいものを創造する可能性は失われてしまう。
注意してほしいのは、親切ごかしで忠告してくれる連中は、まずほとんどと
いっていいくらい、成功した事がないという事だ。自分が、最後までやり遂げる
事ができなかったから、止めておけと忠告しているにすぎないのである。
彼らの親切な忠告とは、彼らの仲間、つまりは第2第3の失敗者を生み出す道具
にすぎないのだ。だから、本当にダメかどうかは、自分の目で確かめなければ
ならない。本当にこのやり方では、失敗するかどうかを自分の手で確かめてみる。
あの人は失敗したけれど、ひょっとすると、自分がやれば成功するかもしれない
と考えるのだ。そして、止めておけ等という忠告には、耳も貸さず、やってみるのだ。
壁をよじ登ってでも構わない。遠回りしても構わない。もちろん下手でも、ツギハギ
だらけでも構わないのだ。完成品を作りあげる事! この事が、非常に重要なのである。
/中村 修二(工学博士 カリフォルニア大学 サンタバーバラ校教授
20世紀中には、絶対ムリといわれた青色発光ダイオードを、世界に
先駆けて開発。「ノーベル賞に最も近い人」と世界中から評価を受ける)