「転移」とは心理療法、特に精神分析療法の過程で、Cl(クライアント、患者)が
Co(カウンセラー、治療者)に向ける特殊な感情や態度をいう。フロイトが初めて
これを概念化した。あるClは、カウンセラーに依存的になるが、それはClが幼児期、
両親に甘えた事の「転移」であり、またあるClは、カウンセラーに対し反発的であるが、
それはClが幼児期、両親に対し反発的であった事の「転移」であるといった把握をする。
ある精神科医が凶悪犯罪者に対し、ある論文の結論をこう締めくくったそうだ。
「人間としての葛藤を抱えながらも、それでも自分を信じ、心をリフレッシュさせながら、
“3歩進んで2歩下がるといったやり方を楽しむ”つもりで、彼らの治療を進めていく事」。
そしてもう一度、最後に「これは自我の強さとユーモアが必要な作業である。どうやったら、
心は鍛えられるのだろうか?」と問いかけている。思わず唸ってしまった・・・
なぜかといえば、カウンセラーが精神不安定な状態では、とてもカウンセリングどころではない。
カウンセラーだって、生身の人間とはいえ、Clに対する責任もある。それはプロとしては失格だ。
心理療法の先生には「人間力をつけ、治療に対するセンスを養って下さい」と言われたが、
結局、人間は自ら汗をかいて、涙して、血を流した事しか身につかないのではないのだろうか?
やけに厳しい言い方だが、このプロセスの一つ一つが、心を鍛える事につながっていくと思わ
される近頃の私である。