免許皆伝
戦国時代の剣豪、塚原ト伝(ぼくでん)にこんなエピソードがあるそうです。
入門を許された弟子が、ト伝にこうたずねました。
「私は一生懸命に修行します。何年で免許皆伝になるでしょうか?」
「お前はなかなか筋がいい。一生懸命に修行すれば、5年で免許皆伝になるだろう」
ト伝がこう答えると、弟子は不満だったようで、こう問い直します。
「では、私は寝食を忘れて修行に打ち込みます。これなら何年かかりますか?」
「そうだな、その場合には10年かかる」
弟子はからかわれたと思ったのか、再び問い直します。
「じゃあ、私は死にもの狂いで修行をします。何年で免許皆伝になりますか?」
すると、ト伝は
「おい、お前。死にもの狂いでやれば、一生、免許皆伝にはならんぞ」
と笑いながら答えたそうです。
ペースを守り、きちんとおいしく食事を摂り、ぐっすり眠って、一生
懸命に修行をすれば、5年で到着する道も、寝食を忘れて急げば、
病気になったり、ケガをして、結果的には倍の時間がかかります。
ましてや、死にもの狂いで結果を追い続ければ、挫折するか、
体を壊して死んでしまうかして、結局ゴールに辿り着けない。
何だか、人生そのもののような気がしてきませんか?
「結果」ばかりを早急に追い続けるのではなく、毎日毎日の修行その
ものを楽しむ事こそが、人生の「免許皆伝」の近道ではないでしょうか?
/佐野 隆一