氣を入れて持つ
藤平光一宗主は、今まで多くのプロ野球選手を指導してきました。
元読売巨人軍の王貞治氏も、そのお一人です。
王貞治氏は期待されて入団しましたが、1年目は結果を残せず、
「三振王」と酷評された時期があります。
様々なご縁に導かれて、入団2年目に藤平光一宗主と出会って、
現役時代を通して、毎年継続して学ばれました。
その後、ご本人の努力があってこそですが、
「世界のホームラン王」と呼ばれるほど、結果を残されました。
藤平光一宗主は、まず心身統一した姿勢(統一体)を指導した上で、
「氣を入れて、バットを持つ」ことを指導しました。
調子が悪い選手は、ほとんどの場合、自分でも氣づかないにうちに、
身体は力み、バットを握り込んでいます。
握り込むと、身体に余分な力が入り、姿勢は崩れてしまいます。
そして、自分の思うようにバットを扱う事ができません。
それでは軽く持てば良いかというと、そうでもありません。
ただ軽く持っているだけでは、バットを支える事ができません。
150キロの球を打ち返す事などできません。
握ってもダメ、軽く持ってもダメ、それで多くの選手が悩むのです。
バットに限らず、物の持ち方には正しい持ち方があります。
それは「軽く持って、氣を入れる」という持ち方です。
軽く持った上で、その物に「氣が通っている」と思っていると、
その物の隅々まで氣が通います。
感覚的にいえば、自分の身体の一部、という感覚です。
軽く持った状態でも、バットの先端まで氣が通っていると、
身体を押したり、バットを押したりして安定を確かめると、
微動だにしない安定した状態になります。
(この安定を確かめる方法を「氣のテスト」といいます)
どの選手も、バットを軽く持っているにも関わらず、
姿勢もバットも安定するのを体験して、大変驚きます。
更に、その状態で素振りをすると、すごい音がします。
これにも驚きます。
このように、バットの持ち方をチェックするだけでも、
調子の悪い選手も、調子を戻す事が多いのです。
心身統一合氣道では、木剣でこの持ち方を稽古します。
氣の入った木剣は、大変な威力があります。
例えば、相手が構えている木剣を簡単に払い下ろせます。
握り込んだり、ただ軽く持っている木剣には、
ほとんど威力がありません。
木剣はとても正直です。
書道をする方は、筆の持ち方に活用できます。
演奏をする方は、楽器の持ち方に活用できます。
料理をする方は、料理用具の持ち方に活用できます。
これを学ぶために、プロ野球選手などのプロアスリートや、
書家や音楽家が、木剣の稽古をなさっています。
正しい持ち方は、日常生活万般に活用する事ができます。
例えば、お皿を運ぶ時に活用してみましょう。
氣を入れて持つと、テーブルに静かに置く事ができます。
氣が入っていないと、乱暴になりますね。
心身統一合氣道の上達、特に剣や杖(じょう)の上達には、
日常生活での「氣を入れて持つ」訓練が重要です。
さて、今月の実践・検証です。
今回は、一度でも「正しい持ち方」を学んだ方が対象です。
[実践すること]
・持つもの全て、氣を入れて持つ
(氣を入れて持つ=軽く持ち、持つ物に氣が通わせる)
[検証のポイント]
・氣を入れて持った結果、身体にどのような変化があったか、
持つ物にどのような変化があったか、観察する
/柳瀬 勲