女神Sekhmet④
太陽神ラーの恐るべき行為によって生まれたこの女神は、最初から“神を崇め
ない人間達を抹殺するために創られた”神だった。獅子の姿をしたこの女神は、
生み出された目的のままに、その鋭い爪と牙で人間を惨殺して回る。
逃げ惑う人間達は次々と倒れ、街はまるで赤い海のよう。もちろん、この女神
に人間の武器なんか通用しない。来る日も来る日も、大勢の人間が殺されて、
あっという間に人間は絶滅の危機に・・・ これを見かねた神々はいい加減、
「あの恐ろしい女神を止めよ。人間達がいなくなっては、誰も神々を敬いは
しないだろう。今や誰も神殿にお供え物をせず、祈りは恐怖に取って代わら
れた。あなたはこれで、本当に満足なのか?」とラーに進言した。
ラー自身もセクメトのあまりの残虐ぶりに、少々恐ろしくなってきていた
ところだったので、この女神を呼び寄せ、「もうそろそろいいだろう」と
言った。しかし、人間狩りが楽しくて仕方ないセクメトは聞かない。
「なぜ止めるのだ、父上よ。怖気づいたのか? 私は人間を皆殺しにする
ために生まれたのではないのか?」
「いや、しかしなぁ。ちょっとやりすぎというか・・・」
「私に“やれ”と命じたのはあなただ。今さら退けぬわ。それともあなたは、
今の地位を降りるのか?」
「ううっ。そ、それは・・・」
「ならば、口出ししないで頂きたい。私は血の色に酔いしれていたいのだ」
そうしてセクメト女神は、サッサと狩りに出かけてしまった。これはマズい
と感じたラーは、どうしたものかと神々を呼び寄せ、知恵を借りようとした。
今さらなんだよ。マスコミに漏れてから、役員会召集じゃマズいんだよ。
アンタが責任とれよ。ってのが本音としても、どうにかしない事には世界
の存亡にかかわる。しかし誰も、この女神を力づくでは止められない。
セクメト女神は、神々みんなが寄り集まってもムリなほど、ちゃっとヤバい
めに強かったのだ。そこで、神々は協議した。
まずは人間の娘達を集め、麦を集めさせる。「ビールを造れ」ガンガン麦を
踏んでビールを造った。「色をつけろ」薬草を絞って、ビールに血のような
赤い色をつけた。そう、これは生き血をすする事が大好きなセクメト女神に、
血にそっくりな酒を飲ませて、酔わせてしまおう大作戦だったのだ。
な~んか、どっかで聞いたような話だよね。
いよいよ完結編へGoGo。乞うご期待!
♪出雲大社で見た「八岐大蛇(やまたのおろち)」とセクメト女神には共通項がある。それこそが神話の持つ世界観なんだよね。まさにワンネス!