雷(いかづち)
仕事でずっと行けなかった太極拳のお稽古の休憩時間、同じフロア
では能面の展覧会が行われていた。女の嫉妬に狂った顔と言わ
れる般若や白い髭をたくわえた翁(おきな)など、見慣れた面を
ひと通り見た後、突然現れたのがこの面!
これは指導されている先生の作品で、タイトルには「雷(いかづち)」
とある。うわーっ、超怖っ! こんな真っ赤な面があるんだ。付け
たら取れなさそう。ものスゴーい存在感じゃん。こんなの初めて
見たけど、かなり珍しいモノらしい。
雷の事を「いかづち」って言うんだ? 「いかづち」とは、雷、なる
かみ、いかずち。いかづちの「いか」は猛々しい、荒々しい、立派
などを意味する形容詞「厳し(いかし)」の語幹で、「づ(ず)」は
助詞の「つ」。
いかづちの「ち」は、「みずち(水霊)」や「おろち(大蛇)」の
「ち」と同じ、霊的な力を持つものを表す言葉で、「厳(いか)つ
霊(ち)」が語源なんだとか。
いかづちは鬼や蛇、怖ろしい神などを表す言葉だったが、自然現象
の中でも特に恐ろしく、神と関わりが深いと考えられていた「雷」
を意味するようになったんだって。
雷が鳴ると、落雷よけに「くわばら、くわばら」と呪文を唱える風習
があるけど、これは菅原道真の土地の地名であった「桑原」にだけ、
雷が落ちなかったという話に由来するんだよね。
平安時代に藤原一族によって流刑された道真が、恨みをはらすため
雷神となり、宮中に何度も雷を落とした。これによって、藤原一族
は大打撃を受けたのだが、その道真公の「恨みはらさでおくべきか」
の顔を表したのが、この「雷(いかづち)」の面らしい。
そりゃ怖いはずだわ。と思いつつ自分の中にも、いかづちって絶対
あるなぁと思う。だから、ココロが反応したんだよね。ないものには
反応しないから。
私の中の般若やいかづちをしっかり見つめよう。そして、日頃こんな
顔して暮らしてないか、要チェックだぁ(笑)。菅原道真公、こんな
場所で、思いがけず貴重なメッセージをありがとうございました!