お手伝い
小学生くらいの子供でもお手伝いをすれば、ずいぶん役に立つ。食器棚
からお皿を出すように頼めば、間違いなく持って来る。鍋にお湯を入れて
火にかける事だって難しくない。肉を切る事だって、米をとぐ事だって
簡単な仕事である。やる気さえあれば、十分な戦力だ。「さぁ、次は何の
お仕事?」と頼もしくさえある。
ところが、これだけ毎日「お手伝い」をしているのだから、そろそろ一品
くらい料理らしいものもできるのではないかと、「一品お願いね!」と
頼んでみると、これが案外うろたえたりする。「お手伝い」は所詮「お手
伝い」だったのだ。
能力を身につけるには、まず底辺に体系化された「知識的資源」が
必要だ。この知識をベースにやってみる事によって「経験的資源」
が身につく。更に、これを繰り返す事によって定着した「能力的
資源」になっているという具合である。
ところが、「知識的資源」がないと「経験的資源」が身につかないかと
いうと、それがそうでもない。知識がなくてもできる場合がある。そう、
それが「お手伝い」である。
会社の中にも「お手伝い」のような仕事がたくさんある。何しろ理屈を
教えるより、やり方を教えた方が即戦力だという訳で、とにかく「やり
方重視」なところが現場にはある。「やり方重視」で教育された人が、
また人を教育する訳だから。これがまた「やり方」だけの人材が育つ。
いやはや、これでは「全社お手伝い状態」である。自律人材が必要
である。
以前、「わかる人から、できる人へ」というキャッチフレーズを聞いた
事がある。それは、理屈だけではなく、成果を示せる人間になろうと
いう事だと思う。しかし、その反対も結構大事である。「できるだけ
の人から、わかる人へ」という事である。
体系化された理論に基づいて仕事ができるようになると、それはその
人に身についた独立した能力と認める事ができる。すなわちポータ
ビリティーの保持である。わかるようになると工夫することができる
ようになる。仕事が楽しくなる。皆さんの職場では、いかがだろうか。
/山本 正樹(経営コンサルタント・理想経営代表)