牧島如鳩「一人だに亡ぶるを許さず」
私が「牧島如鳩展」で、最もグッときたのが、「一人だに
亡(ほろ)ぶるを許さず」という作品だ。絵の中心に据え
られたキリストは、6本の腕を持っている。その内、2本は
十字架に打ち付けられているのだが、残りの4本は何か
を持っており、まるで千手観音のようだ。
周りを天使が取り巻いているのだが、中には天女もいて
仏教の影響が見受けられる。通常、最後の審判では、
天国に行く者と地獄に落ちる者が対照的に描かれる
のだが、ここでは「一人だに亡(ほろ)ぶるを許さず」
というタイトルの通り、誰一人として亡びる者はなく、
全ての人々が天界に引き上げられている。
みんな揃って極楽浄土へ。この世界観を描けるのは、
神仏に通じた如鳩だけだと思う。「一人だに亡(ほろ)
ぶるを許さず」という言葉には、体温すら感じられ、
慈愛に満ちあふれている。
心の中で何度も読んでいるうちに、込み上げてくるもの
があり、私はこの絵の前から、なかなか離れられなかった。
下絵で終わっているのが、本当に本当に残念だと思う。
生前、如鳩は「500年後の人々に自作を見てもらいたい」
と語っていたそうだが、私は彼の死後、たった34年で見る
事ができた。これも道教の神々のお導きだろう。あの三井
記念美術館に行かなければ、牧島如鳩という偉大な画家
の存在を、未だに知らなかったのだから。
私にとっては、スペインのシュールレアリズムの女流画家、
レメディオス・バロ以来の感動だ。こういう感動体験を味わ
う度、生きてて良かったと心底思う。
画家も絵画も展覧会も全て、ご縁なのだ。このご縁に
心から感謝したい。次回、私が行く展覧会は「ベルギー
幻想美術館」だ。前売券Gotだもんね♪
ポール・デルヴォーやルネ・マグリットはもちろん、
フェルナン・クノップフが見られるのはうれしいなぁ。
彼の「見捨てられた町」になぜかココロ惹かれたのだ。
待ってろよぉぉぉぉぉ~、渋谷Bunkamura!