ストロー

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昔々、お釈迦様がまだ菩薩だった頃、菩薩は一匹の猿として生まれました。菩薩は猿のリーダーとなり、

猿の群れを率いて暮らしていました。ある時、住んでいた森の餌や飲み水がなくなったので、他の森に

引っ越すことになりました。知らない森に着くと、菩薩の猿はボスとしての責任を持って、次のように

言いました。「みんな、これから知らない森に住むのだから、気をつけなさいよ。何でもパクパク食べ

るんじゃないんだよ。どこにでも入って、水を飲んではいけないよ。危険な事があるから、新しいもの

を見つけたら、私に報告しなさい。私がちゃんと調べて、安全だったら、あなた方に薦めますからね」。

立派なリーダーの元、猿達は森をあちこち探検に行って、湖を見つけました。それはものすごく澄ん

だ湖で、猿達はあまりにもきれいな水にビックリしました。本当はすぐ飛んで行って、水を飲んだり、

遊んだりしたかったのです。でも、行儀が良い猿達は、ボスに聞いてみようという事になりました。

それでボスの所に行って、「良い湖を見つけました。あんなにきれいな水は見たことがないです。

だけど、まだ飲んでないですよ。遊びたいんですけど、ちょっと調べて下さい」と言いました。

「よし、わかった。お前たち、よくやった!」と、ボス猿はみんなと湖に行きました。ボス猿が湖を

調べたところ、湖に入って行く足跡はあるのに、出て行った足跡がない。湖に入ったならば、また

出て行くはずなのに、おかしい。ボス猿は「これはヤバいぞ。おそらく鬼がいる湖に違いない」

と考えました。実は確かに、その湖には恐ろしい鬼が住んでいたのです。鬼は、猿達を食べよう

と思って、さっきからずっと待っていました。普通、猿というのは、すぐに飛んで来るものなのに、

この群はなかなか湖に入りません。鬼は待ちくたびれて、すごくイライラしてきました。そして、

我慢できずに、湖の中からザバッと立ち上がったのです。鬼はボス猿に問いかけました。「ここは

澄んできれいな湖だ。君らは喉が乾いているし、暑くて困っている。なぜ早く水に入って水を飲み、

水中のレンコンを食べ、泳いで遊び、体を十分楽しませないのか?」。ボス猿は「やはり思った

通りだ」と思いました。そして「確かに、水はきれいです。でも、動物達は誰もいない。水を飲んでも

いないし、遊んでもいない。それはどういう事ですか? あなた達が食べるのではないですか?」。

鬼は人間と違って、嘘は言いません。「食べますよ」と答えたのです。そこで、ボス猿は、鬼の言葉に

抜け穴を見つけました。そして「水を飲んだ動物は食べますか?」と聞いたのです。鬼は「水を飲ん

だ動物を食らう権利は、俺にはない。湖に入った奴らを、みんな食ってやるんだ」と答えたのです。

そこで、ボス猿は智恵を働かせ、みんなに「湖の周りの竹笹を茎を取って、茎の中の節を吹き飛ば

しなさい。そして、茎の先を湖に入れて、もう一方の端から吸うと、水が飲めるでしょう。たとえ水を

飲んでも、湖に入らなければ、鬼にはやられないから大丈夫!」と教えました。猿達は、ワイワイと

笹の茎を切り取って、その茎でストローを作りました。そして、水に入らずに、湖の周りにズラッと

座って、長いストローで水を飲んだのです。鬼には全く手が出せません。菩薩は、素晴らしい智恵

を使って、鬼に勝ったのです。その菩薩の智恵を褒め称え、その辺りの竹笹の節は、それからなく

なってしまったという事です。

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