ちょっとイイ話⑱
これは、大阪で聞いた話だけれども、天満の寺町界隈は、坂の多い所だ。
自動車なんてない頃だ。荷車を引いている連中が、いつもそこで苦しむ。
その近所の子供の中に、頭のおかしい子がいて、親がいつも持て余していた。
それをある感心な人が、可哀想に思ってな、ある日、その子に言ったそうだ。
「お前、ワシが弁当代をやるから、朝起きたら、坂の所におって、坂で車を
引いて、ふぅふぅ言っておる小僧や、年寄りや女の人が来たら、押してやれ。
しかし、決してお礼をもらってはいかん。その代わり、ワシが夕方帰って
来たら、必ずお前に駄賃をやる」と。駄賃をやって、一日やらせた。
バカの一つ覚えで、駄賃をもらうものだから、一所懸命にやる。そこで、
ありがたがって、何がしかやろうとすると「いや、そんなものは、もらわん」
と言う。それが、たちまちのうちに、えらい有名になった。「この坂にえらい
感心な小僧がおって、少し足らんようだけれども、心掛けのイイ奴だ」という
事になって、評判になった。1、2ヶ月するうちに、「家に来てもらえまいか?」
「あれを引き取りたいが・・・」という申し入れが、たくさん集まるようになった
そうな。それは、なまじ小利口な油断も隙もならんような奴よりは、智慧遅れ
でも、真面目で糞力があるのだから、非常に役に立つ。これを一つ活用したら、
どんなにイイかわからない。その後、立派に店を持つ者になったそうだ。
♪今日のTV批評:マネーの虎♪ 真剣な眼差しは、美しく輝いている。どの人も応援したくなった。