タカクテキモノノミカタⅠ
私は自分の足で歩いている頃、車椅子の人を見て気の毒にと思った。
見てはいけないものを、見てしまったような気持ちになった事もあった。
私は何と一人よがりな、高慢な気持ちを持っていたのだろう。
車椅子に乗れた事が、外に出られた事が、こんなにもこんなにも
うれしいというのに! 初めて自転車に乗れた時のような、スキーを
履いて、初めて曲がれた時のような、初めて泳げた時のような、女の子
から初めて手紙をもらった時のような・・・
でも今、廊下を歩きながら、私を横目で見ていった人は、私の心が、
ゴムまりのようにはずんでいるのを知らないだろう。健康な時の私の
ように、哀れみの目で、車椅子の私を見て通ったのではないだろうか?
幸せって何だろう? 喜びって何だろう? ほんの少しだけど、わかった
ような気がした。それはどんな境遇の中にも、どんな悲惨な状態の中にも
あるという事が。そしてそれは、一般に不幸と言われてるいるような事態
の中でも、決して小さくなったりしないという事が。病気やケガに、不幸と
いう性格を持たせてしまうのは、人の先入観や生きる姿勢のあり方では
ないだろうか?
/星野 富弘
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