支え of 支え
トゥレット(Tourette)症候群は比較的稀な障害と考えられてきたが、近年で
はとりわけ欧米において盛んに研究され、またアメリカを始めとしてトゥレット
協会が組織されており、小児・思春期の精神障害の中でも高い関心を集め
ている障害の1つである。
そうか、トゥレット協会は全世界に組織されているのか。そういうネットワ
ークがあると聞いただけで、どこかホッとできるではないか。何かあった時
に連絡できる協会があるというのは、患者本人はもちろん、支える家族に
とっての“支え”であり、最後の頼み綱だと思う。
治療にあたってはチック症状のみでなく、トゥレット症候群の患者全体を治療
するという視点に立つ事が大切である。と同時に、本人と家族や教師など周囲
の人々に対して、障害の特性を正しく理解するように促して、チック症状や合併
する障害を持ちながらも発達し、適応していくように支えていくという精神療法
及び環境調整の果たす役割は大きい。軽症例では、このような精神療法のみ
で軽快する事も有り得る。
癌患者の電話カウンセリングの仕事をしていた時、患者本人が辛いのはもちろ
んだが、それを支える家族の肉体的疲労を軽減し、精神面をケアする事も同じ
くらい重要だと痛感した。「妻は看病して当たり前」という周囲の理解のなさ
に耐え、一人で苦しみ、電話の向こうで泣き崩れている田舎の嫁。自ら重い
持病を抱えながら、病院の寒い床に寝泊りし、共倒れ寸前の老夫etc.
つまり支え of 支えが不可欠なのだ。トゥレット症候群による問題行動を引き
起こす子供の親は、夜ゆっくり眠る事もできない。今は短期でもいいから施設
に子供を預け、自分達の体力を回復させる事が最優先だ。そうしなければ、
どんどん追い詰められていく。
今、社会全体の支え of 支えが真剣に求められている。