天職
「百姓一概」とは、99才で亡くなった親類が、卒寿に書いた本のタイトルである。
農家に生まれて、農家で最期を迎えた。苗代で育った苗を、よく調製された水田
に植え、八十八の手を加えるというコシヒカリ米を、毎年毎年の収穫を迎える日
まで育て上げる。約1世紀、毎年毎年、泥だらけになりながら、腰をかがめて・・・
田舎では珍しい仕事ではない。どこの農家でも、変わり映えのしない労働風景だ。
何はともあれ、抜群のコシヒカリを作り上げる。自称「いちがいもん」の彼の天職は、
言うまでもなく「農業」である。夜明け前に田んぼに出る。家族はまだ寝ている。
村一番の早起きで働き者。昼食はあぜ道でとる。川で手を洗い、ずぶ濡れの手ぬ
ぐいを肩に担いだまま、米粒を頬張る。彼の父も百姓だった。そのまた父も。代々、
受け継ぐ土地を守らなければならなかった。夕暮れ時、夏の太陽はいつまでも高く、
いつまでもいつまでも、草取りに励むことができた。「名人」と呼ばれるようになった。
声が良く、歌がうまい人だった。村中の人に愛されていた。100年前、農家に生まれ、
職業を選択する事など許されなかった彼をして、農業を天職と言わしめているのは、
彼の職業に対する「情熱」である。彼は天職を発見したのではなく、天職を創り上げ
たのである。毎年毎年、同じ繰り返しをしながら、創意工夫を重ねて。自分の仕事に
一概に取り組むことが、天職を見つける一番重要なことなのだ、と教えてくれている。
「転職」を良しとしている時代が到来している。適職発見フェアなるもののチラシを
方々で見かける。仕事を継続させる事を許されない人が多い現代社会だから、仕方
のない現象なのかもしれない。しかし、一方で安定職を持っているにもかかわらず、
転職を真剣に考えた事のあるビジネスマンが、全体の7割を占めるという。世に言う
エンプロイアビリティーとは、「自己概念を満足させ得る職業を、得続ける事ができ
る能力」の事である。エンプロイアビリティーの獲得は、労働市場の上で、自由を
得る条件であるともいえる。エンプロイアビリティーを獲得すると、自然チャンス
は到来する。幸せは歩いてやってくるのだ。その仕事を続けるにしろ、違う仕事に
就くにしろ、機が熟すのである。エンプロイアビリティーとは「情熱」をもって、創り
上げるものである。天職探しに放浪してはいけない。天職など、いくら探しても見つ
からないのだ。天職になる可能性を秘めた職業は、全体の4割であるという。その
4割の中の職業をつかまえたら、それを足がかりに天職を創り上げていくのだ。
「仕事さがし」に楽しみもあるが、「自分さがし」もなかなかイカしている。
「自分みがき」は、もっとワクワクする。
/山本 正樹(経営コンサルタント、株式会社理想経営代表)
♪今日のWhite day card from Hawaii 送り主は、ハワイ島に行った時にお世話になった、現地のタクシー運転手さんコトDennisだ。かれこれ7年間、Birthday&Xmasカードのお付き合いが続いている。バレンタインに何も送ってないのになぁ。こんなコトは初めてだ。何千キロの彼方から、突然カードを送ってくれる人がいるって、本当にうれしい。有り難いなぁ♪