夫婦
今や、円熟味を増した個性派俳優の夫婦として有名な長門裕之・
南田洋子夫妻だが、若い頃は様々な苦労をしたそうだ。
中でも、知り合いの借金の連帯保証人になって、結局その莫大な
借金を全て背負う事になってしまった時ほど、困った事はないと言う。
住んでいた家はおろか、洋服や宝石等を全て手放してみたが、
それで間に合う金額ではなかった。毎日のように、債権者が夫婦
の行く先々に押しかけて来る。これではとても仕事どころではない。
いつしか仕事も少なくなり、狭いアパートに閉じこめられて、
息が詰まりそうな生活だったそうだ。先行きの希望も見えなくて、
とても暗く、やるせない毎日を過ごす事になってしまった。
そんなある日、南田洋子は、こんな事を思わず言い出した。
「もう、こんな毎日はイヤ! どうせなら、もっと大きな家に住んで、
おいしい物を食べたり、好きな事をしましょうよ!」。それを聞いた
夫の長門裕之は「そんな事、できるはずがないだろう。これ以上、
借金を増やしてどうなるんだ?」と思わず口にしそうになったが、
どうせ借金を抱えているのだ。いざとなったら、そうなった時の事
と覚悟を決めた。そして、それからは新築の大きな家に引っ越したり、
オシャレをしてパーティーに出かけて、毎日を楽しむ事にした。
すると、どうだろう? 苦しい生活を強いられているはずなのに、
いつも楽しそうにしている夫妻を見て、仕事をお願いしたいという
人が多くなってきた。夫妻はもちろん、どんなに小さな仕事でも、
感謝して誠実に取り組んでいった。おかげで気がつくと、借金は
いつの間にか、きれいに返済し終わっていたという。きっとこれは、
夫妻が自分達の運命を嘆いてばかりいずに、もっと前向きに生きて
いこうと決めたからこそ、生まれた結果なのだろう!