ガンガー
この緑のゾウは、今から10年前、大失恋後のボロボロの状態
でインドに行った時、ベテラン添乗員の女性からプレゼント
された物だ。彼の名は「ガンガー」。
定位置はPC棚の左側で、目の高さが違いながらも、私とよく
目が合う(笑)。とにかく見れば見るほど、マヌケでイイ奴だ!
私は突然の大失恋で、インドに行く目的は急遽、「私の素直で
はないところ、嫌いな部分は全部、ガンジス河に流して、まっ
さらな自分に生まれ変わってこよう」という事になった。
聖地ベナレスではリクシャ(←これが日本に渡って、「人力車」
の語源となった)に乗り、市場などを周ったのだが、この時、
現地の人がやたら「ガンガー」と言うので、何かと思ったら、
ガンジス河の事だった。
インド人にとって、ガンジス河はそれはそれは特別な存在で、
思い入れもハンパではない。日本人の富士山に相当するの
ではないだろうか。
そして、私は願わくば、お誕生日をこのガンジス河で迎えた
いと願っていたところ、その想いが聞き届けられる事となる。
ネパールとインドを併せて12日間ぐらいのツアーだと思ったが、
これは決して偶然ではない! 本当に涙が出るほどうれしい
シンクロだった。
そこで添乗員さんから、Birthdayケーキと共に、このガンガー
をプレゼントされたのだ♪
早朝、ガンジス河の焼き場では煙が上がり、私の誕生日に
死を迎える人がいるという、ごく当たり前の生と死の交差
で始まり、私が乗っていた小舟の脇では、鳥がプカプカ
と浮いている牛の死体をひたすら啄ばんでいた。
ツアーの人達は気持ち悪がったが、私はそんな光景から目
を背ける事なく、じっと見つめていた。そして、この世で無駄
になるものは何一つなく、全ては善循環なのだと実感した。
悠久な営みを繰り返すガンジス河に、供物を捧げた後、両手
を浸して、新たな自分の再生を願った。あの時の何とも言え
ない玲瓏(透き通り、曇りのない様。不安や迷い、雑念を
取り払い、澄み切った心)とした感覚。
思えば私の人生において、このガンジス河でお誕生日を迎え
られた一連の体験が、スピリチュアルな世界へのきっかけに
なったのかもしれない。
この感覚を忘れないために、ガンガーはいつも私のそばにいて、
「未空、大丈夫?」と首を傾げながら見守ってくれているのだ。
改めてThank you, ガンガー!